LED電球が眩しいのをどうにかしたい…
部屋の明かりをLEDに変えたら、なんだか目がチカチカして落ち着かない……そんな経験はありませんか?手軽な眩しさ対策として、SNSなどでは「マスキングテープを貼る」というアイデアがよく紹介されています。
確かに、家にあるもので今すぐ解決できるのは魅力的ですが、実は照明器具としての安全性や、LEDの特性を考えると、手放しでおすすめできない面もあるんです。ここでは、なぜマステが眩しさを和らげるのかという仕組みと、私たちが知っておくべきリスクについて、詳しく深掘りしていきますね。
LED電球が眩しい際のマスキングテープNG対策

和紙の拡散効果でLEDの眩しさを抑える仕組み
LED電球の光を「刺すように眩しい」と感じる最大の原因は、専門的な言葉で言うと「輝度(きど)」の高さにあります。従来の白熱電球は、ガラス球の中にあるフィラメントが発光し、その光がフロスト加工されたガラス全体に広がることで、面で光るような柔らかさがありました。
一方でLEDは、わずか数ミリ四方のチップが強烈な光を放つ「点光源」です。この小さな点にエネルギーが集中しているため、視界に入ると網膜を刺激し、不快な眩しさ(グレア)を引き起こすんです。
そこで登場するのが、日本のマスキングテープに多い「和紙」素材です。和紙は顕微鏡で見ると、植物の繊維が複雑に絡み合った多孔質構造をしています。LEDの鋭い直進光がこの和紙を通過するとき、繊維の表面で何度も屈折や反射を繰り返します。これが「多重散乱」と呼ばれる現象です。
この散乱によって、一箇所に集中していた光の束がバラバラの方向に分散され、私たちの目には「電球全体がふわっと光っている」ように見えるわけです。

光の質を整える「二次光源」としての役割
和紙のテープを貼ることで、テープ自体が新しい光の源(二次光源)として機能します。これにより、光っている面積が物理的に拡大され、単位面積あたりの明るさが抑えられます。
これは高級な旅館などで使われる和紙の照明シェードと同じ理屈ですね。「今すぐこの刺すような光をなんとかしたい!」という時の応急処置としては、光学的な理にかなった手法だと言えます。ただし、和紙の厚みや色によっては、必要な明るさまで極端に落としてしまうこともあるので、貼りすぎには注意が必要かなと思います。
火事のリスクは?粘着剤の熱劣化とトラッキング対策
「LEDは熱くならないから、紙を貼っても大丈夫」という認識は、実は半分正解で半分間違いです。確かにLEDは白熱電球のように200℃を超えることはありませんが、内部の基板やヒートシンク部分は60℃〜80℃、密閉器具ならそれ以上に達することもあります。この熱が、マスキングテープに使われている「粘着剤」に悪影響を及ぼすんです。
一般的なマスキングテープは、常温で使用することを前提に作られています。そのため、電球の熱にさらされ続けると、粘着剤がドロドロに溶け出したり(軟化)、逆に水分が飛んでカチカチに固まったりします。
この粘着成分が変質し、空気中のホコリを吸い寄せることが、最大の懸念点である「トラッキング現象」の引き金になります。
コンセントにプラグを長時間差し込んだままにしておくと、コンセントとプラグの間にチリやホコリがたまってしまいます。
東京電力より引用
そこに湿気が加わると火災の原因となることがあります。
これをトラッキング現象と言います。
目に見えない場所で進む炭化の恐怖
もしテープをソケットの近くまで貼っていたり、剥がれかかったテープの隙間にホコリが溜まったりすると、そこが湿気を吸って微小な漏電が始まります。
これが繰り返されると、熱によってホコリや粘着剤が「炭化」し、電気の通り道(トラック)が形成されます。最終的にはそこが火種となり、発火に至る恐れがあるんです。
実際に、不適切なLEDの使用や器具への細工が原因で火災に至ったケースも報告されています。

(出典:東京消防庁「火災事例・LED照明」)
「たかがテープ一枚」と思わず、電気を扱う製品であることを意識して、異常な発熱や焦げ臭い匂いがないか常に気を配る必要がありますね。
眩しさ対策で貼る場所は?ヒートシンクは絶対NG
どうしても一時的にマスキングテープを貼る場合、絶対に避けるべき場所があります。それはLED電球の根元付近にある、金属や樹脂でできたギザギザの部分「ヒートシンク」です。

LEDは光自体には熱をほとんど含みませんが、電気を光に変える際に内部で大量の熱が発生します。その熱を外に逃がして、LEDチップが焼き切れるのを防いでいるのがこの放熱部なんです。
ここをテープで覆ってしまうことは、人間で言えば「真夏にダウンジャケットを着て激しい運動をする」ようなものです。熱がこもるとLEDの寿命が縮まるだけでなく、回路がショートして突然消灯したり、最悪の場合は発煙したりするリスクが高まります。
安全に貼れる唯一のエリアはどこ?
もし貼るのであれば、光が透過するプラスチック製の「グローブ(カバー)」部分の先端のみに留めましょう。
グローブ部分はヒートシンクに比べれば温度が低い傾向にありますが、それでも密閉型の器具だと熱がこもりやすいです。全体をぐるぐる巻きにするのではなく、一番眩しく感じる「中心点」に小さなピースを貼る程度にして、放熱の妨げにならないよう最小限の面積に抑えるのが、私たちができる精一杯の工夫かなと思います。
賃貸の眩しい照明をマステで対策する際の注意点
一人暮らしや賃貸物件だと、最初から備え付けられているLEDダウンライトが眩しすぎて困ることがありますよね。「勝手に電球を替えられないし、とりあえずマステで……」という方も多いはず。しかし、ここで気になるのが退去時の原状回復の問題です。
先ほどお話しした通り、LEDの熱を浴び続けたマスキングテープの粘着剤は、数ヶ月もすれば変質してしまいます。剥がそうとしたときに表面の紙だけが破れて、ベタベタした糊が電球にこびりついて取れなくなる「糊残り」が頻繁に発生します。
これを無理に定規などで削り落とそうとすれば、電球のグローブに傷がつき、最悪の場合は弁償……なんてことにもなりかねません。
退去時に慌てないためのメンテナンス
もし賃貸でマステ対策をするなら、最低でも3ヶ月に一度はテープの状態を確認し、新しく貼り替えることをおすすめします。
粘着剤が固着する前にメンテナンスすることで、糊残りを防ぐことができますよ。もし糊が残ってしまったら、シール剥がし液を使いたくなりますが、プラスチックを溶かす成分が含まれていることもあるので、まずは中性洗剤を薄めた布で優しく拭き取ってみてくださいね。手間を考えるなら、後で紹介する「専用ステッカー」の方が、剥がしやすさの点でも優秀ですよ。
長期の眩しさ対策による変色やLED寿命への影響
マスキングテープによる対策は、あくまで「その場しのぎ」であることを理解しておく必要があります。長期間貼りっぱなしにすると、まず見た目に変化が現れます。最初は白かったテープが、熱酸化によって徐々に茶色く変色してくるんです。
これは部屋の清潔感を損なうだけでなく、せっかくのLEDの演色性(物の色の見え方)を歪めてしまい、料理が美味しそうに見えなくなったり、顔色が悪く見えたりする原因になります。
さらに深刻なのが、目に見えない「寿命へのダメージ」です。LED電球の寿命は、内部に使われている電解コンデンサという部品の温度に大きく左右されます。これを説明するのに「アレニウスの法則(10℃半減則)」というものがあり、動作温度が10℃上がると寿命が半分になると言われているんです。
一般には,使用環境の温度が10℃下がると寿命は2倍に伸びるという「10℃2倍則」として寿命を算出するのに使われることが多い。
日刊クロステックより引用
テープで光と熱の逃げ道を塞ぐことで、電球内部の温度が上がれば、4万時間持つはずの設計寿命が1万時間や5千時間にまで激減してしまう可能性があります。
「電気代を節約するためにLEDにしたのに、対策のせいで頻繁に買い替えることになった」のでは本末転倒ですよね。長期的な視点で見れば、物理的に何かを貼るよりも、出力を下げるなどの別の方法を模索すべきだと私は思います。
LED電球が眩しい時にマスキングテープより安全な手段

リスクがあることは分かったけれど、やっぱり今の眩しさをなんとかしたい!という方のために、ここからはマステよりも安全で、かつ手軽に手に入る代替案をご紹介します。最近は100均でも本当に便利なグッズが出ているんですよ。
100均セリアのLED減光ステッカーで眩しさ対策
私が最も「これだ!」と思ったのが、セリアなどの100円ショップで販売されている「LED減光ステッカー」です。これは、スマホの画面や家電のインジケーター、そして照明の眩しさを抑えるために開発された専用のシールです。
最大の特徴は、素材が紙ではなくPETやPVCといった耐熱性・難燃性に配慮された素材であること。また、粘着剤も「再剥離性」が高いものが選ばれており、熱がかかってもマステほどひどい糊残りが発生しにくい設計になっています。
デザイン性と機能性の両立
セリアの製品には、透過率を段階的に選べるものや、微細なドットパターンで光を美しく拡散させるものがあります。これを電球の眩しい部分に貼るだけで、見た目もスマートに、かつ安全に減光できるんです。
ハサミで自由にカットできるタイプも多いので、電球のサイズに合わせてカスタマイズできるのも嬉しいポイント。マステを買う前に、まずは100均の衛生・電気小物コーナーを覗いてみることを強くおすすめします。
ダイソーの遮光シールで眩しい家電の光も対策
「電球そのものではなく、寝室にある空気清浄機やWi-Fiルーターの小さなランプが眩しくて眠れない!」という場合には、ダイソーの「遮光シール」が非常に役立ちます。

電球用の減光ステッカーは光を「通す」ものですが、こちらは光を「完全に遮断」または「大幅にカット」することに特化しています。夜中に青白いLEDが部屋を照らしていると、脳が覚醒してしまい睡眠の質が下がると言われています。これをペタッと貼るだけで、暗闇をしっかり確保できるんです。
注意したいのは、メイン照明であるLED電球に「遮光」シールを貼ってしまうと、光が全く出なくなるだけでなく、熱を一点に集中させてしまうこと。ダイソーなどで選ぶときは、パッケージをよく見て「減光(Dimming)」なのか「遮光(Blackout)」なのかを確認し、用途に合わせて使い分けるのがミト流のコツです。
眩しいからと改造する前にメーカー保証を確認
これは少し耳の痛いお話かもしれませんが、大切なことなのでお伝えしますね。LED電球のパッケージやメーカーのWEBサイトにある「安全上のご注意」を読んだことはありますか?そこには必ずと言っていいほど「器具を改造しない」「布や紙などの可燃物で覆わない」という趣旨の文言が書かれています。
実は、電球にテープやシールを貼るという行為は、メーカー側から見れば立派な「不適切な使用」にあたります。もし対策をしたことが原因で電球が故障したり、器具のソケットが変形したりしても、保証期間内であっても修理や交換は受けられません。
自己責任のリスクを最小限にするために
何か不具合が起きたとき、最後に頼れるのはメーカーのサポートです。それを自ら放棄してしまうことになるので、対策を行う際は「あくまで自己責任である」という覚悟が必要です。
もし不安が少しでもあるなら、物理的な細工をする前に、まずは調光機能付きの電球に買い換えるなどの「製品の機能」で解決する方法を優先的に検討してみてください。
眩しさをプロの技で解決する耐熱カプトンテープ
「100均のステッカーでは少し不安だけど、どうしても貼って解決したい」というこだわり派の方には、舞台照明や撮影の現場、さらには宇宙開発でも使われる「カプトンテープ(ポリイミドテープ)」が面白い選択肢になります。

このテープの凄いところは、なんといってもその耐熱性。200℃以上の高温下でも特性が変わらず、絶縁性も抜群に高いんです。元々は電子基板の絶縁などに使われるプロ仕様の道具ですが、最近はDIY用として通販で簡単に手に入ります。
アンバー色がブルーライトをカットしてくれる
カプトンテープは独特の「琥珀色(オレンジ色)」をしています。これを白いLEDに貼ると、色温度が下がり、温かみのある電球色に近い光に変わります。さらに、目に刺激の強いブルーライト成分を物理的にカットしてくれる副次的な効果もあるんです。
見た目は少し特殊になりますが、「絶対に剥がれてほしくない、かつ火災リスクを極限まで下げたい」という場合には、普通のマステを使うよりもはるかに理にかなった選択と言えるでしょう。まさに、照明に興味がある人向けの「通な対策」ですね。
眩しさを根本から解決する調光機能付きスマート電球
ここまで色々な貼りモノ対策を紹介してきましたが、正直に申し上げますと、現代における最もスマートで安全な解決策は「スマート電球」への交換です。Philips HueやSwitchBot、アイリスオーヤマなどから出ているスマート電球なら、スマホアプリやリモコンで明るさを0%から100%まで自由に変えられます。
「眩しいからマステで隠す」のではなく、「眩しいから出力を絞る」。これこそが根本的な解決ですよね。出力を絞れば消費電力もさらに抑えられますし、電球自体の発熱も減るので、寿命を延ばすことにも繋がります。
| 対策方法 | 手軽さ | 安全性 | メリット |
|---|---|---|---|
| マスキングテープ | ◎ | △ | 家にあるもので即解決できる |
| 100均減光シール | ○ | ○ | 安価で専用設計の安心感がある |
| カプトンテープ | △ | ◎ | 圧倒的な耐熱性とブルーライトカット |
| スマート電球 | △ | ◎ | 根本解決。調光・調色が可能 |
最近は1,500円前後で買えるお手頃な製品も増えています。一度設定してしまえば「夜は暗めに、昼は明るめに」といったスケジュール設定もできるので、生活の質が劇的に上がりますよ。
LED電球が眩しい時のマスキングテープ対策まとめ
LEDの電球が眩しい時にマスキングテープで対策するのは、和紙の拡散効果を活かした優れたアイデアではありますが、長期的な「安全性」や「電球の寿命」を考えると注意が必要です。熱による粘着剤の劣化が引き起こすトラッキング火災や、糊残りのトラブルなど、目に見えないリスクが潜んでいることを忘れないでください。
まずは、セリアやダイソーにある専用の「減光ステッカー」を試してみる。それでも満足できなければ、カプトンテープのような耐熱素材を検討する。そして、最終的には「スマート電球」などの調光機能を持つ製品に切り替えるのが、最も賢く、安全に心地よい光を手に入れるロードマップかなと思います。
お家でのリラックスタイムを台無しにする「眩しさ」問題。この記事が、皆さんが安全に、そしてオシャレに解決する助けになれば嬉しいです!なお、照明器具の取り扱いや設置に関しては、必ず各メーカーの最新の取扱説明書を確認し、不安な点がある場合はお近くの電気店や有資格者に相談するようにしてくださいね。

