ダイニングの空間づくりにおいて、おしゃれなペンダントライトは非常に魅力的なアイテム。しかし、デザインだけで選んでしまうと、ダイニングに設置するペンダントライトで失敗する典型的な例に陥ることが少なくありません。
例えば、ペンダントライトだけで照明を済ませようとして、いざ生活してみると部屋全体が暗いと感じたり、設置した場所が悪くて邪魔に感じ、最悪の場合いらないとさえ思ってしまうこともあります。こうした設置後の後悔から、せっかくの照明をやめたという声も聞かれます。
この記事では、ニトリなどで人気の商品を選ぶ際の注意点から、もし暗いと感じた場合の具体的な対策、そして本当におすすめできる機能まで、おしゃれと実用性を両立させるための知識を網羅的に解説していきます。
ダイニングでのペンダントライトで失敗する主な原因

固有の欠点
ペンダントライトが持つ最も大きな特徴は、そのデザイン性や空間演出力と引き換えに、照明としての「照射範囲が限られる」点にあります。
多くの場合、ペンダントライトは特定の範囲、例えばダイニングテーブルの上だけをピンポイントで照らすことを得意としています。そのため、部屋全体を均一に明るくするシーリングライトとは根本的に役割が異なります。
| 比較項目 | ペンダントライト | シーリングライト |
| 主な役割 | タスクライト(特定の場所を照らす) 装飾照明(空間のアクセント) | 主照明(空間全体を照らす) |
| 照射範囲 | 限定的(ピンポイント) | 部屋全体(均一) |
| 適した用途 | 特定の範囲を照らす | 部屋全体を均一に明るくする |
| 特性・注意点 | デザイン性や空間演出力が高い反面、 これ一つで部屋全体を明るくするのは難しい | 均一に照らせる |
| 誤用時の懸念 | 作業や学習時に手元が影になりやすい | 特になし |
この特性を理解せずに採用すると、空間の用途、例えばテーブルで作業や学習をする際に「手元が影になって不便だ」と感じる場面が出てくる可能性があります。つまり、ペンダントライトは空間全体の明るさを確保する「主照明」ではなく、特定の場所を照らす「タスクライト」や空間のアクセントとしての「装飾照明」の側面が強いと言えます。
ペンダントだけで部屋は明るいか
ダイニング空間の照明を、ペンダントライトだけで賄おうとすると、多くの場合、部屋全体の明るさとしては不足しがちです。
これは、ペンダントライトが本来持つ照明としての「役割」に理由があります。天井に直接取り付けて部屋全体を均一に照らすシーリングライトが「全般照明」と呼ばれるのに対し、ペンダントライトは特定の場所を照らす「局部照明(タスク照明)」や、空間のアクセントとしての「装飾照明」に分類されます。
特に、シェード(笠)のデザインが明るさに大きく影響します。 例えば、金属製、陶器製、木製といった光を通さない素材のシェードやシェードの開口部が狭く、下方向だけを強く照らすようなデザインのものは光が天井や壁に回りません。

その結果、ダイニングテーブルの上は十分すぎるほど明るくても、部屋の隅や天井付近は暗いままとなり、空間全体の「陰影(コントラスト)」が非常に強くなります。この「明るい場所と暗い場所の差」こそが、部屋全体が「暗い」と感じる主な原因です。
このため、ペンダントライトだけでダイニング全体の明るさを確保しようとするのは、設計思想として難しい場合が多いです。計画の基本として、ペンダントライトはあくまでテーブル上を照らす主役と位置づけ、部屋全体のベースとなる穏やかな明るさはダウンライトや間接照明などで補う、「多灯分散」の考え方が失敗を防ぐ鍵となります。
部屋が暗いと感じた時の対策
もしペンダントライトを設置した後に「暗い」と感じた場合でも、いくつかの対策を段階的に試みることが可能です。まずは工事が不要な手軽な方法から見直してみましょう。
対策1:電球の性能を見直す(光色・明るさ)
最も手軽なのが電球の交換です。確認すべきポイントは「光色(こうしょく)」と「明るさ(ルーメン)」です。
一般的に、食事を美味しく見せ、リラックスした雰囲気を演出するのは「電球色(暖色系のオレンジ色の光)」です。しかし、この色味は作業や読書をするには、落ち着きすぎて暗く感じることがあります。
もし作業性や体感的な明るさを優先するなら、太陽光に近い「昼白色(白系の光)」の電球に交換するだけでも、空間の印象は活動的になり、明るく感じられるようになります。
次に、電球自体の光の量(明るさ)を上げます。かつては「ワット(W)」が明るさの目安でしたが、これは消費電力を示す単位です。LEDが主流の現在では、実際の光の量を示す「ルーメン(lm)」を確認するのが正しい方法です。
照明器具(光源)から放出されるすべての光「光束」の量を表す単位です。
パナソニックHPより引用
多くのLED器具の仕様(スペック)に、「全光束」としてルーメン(lm)の値が書かれています。
照明器具には「60Wまで」といった消費電力の上限が記載されていることが多いですが、これは主に発熱の大きい白熱電球を基準にしたものです。例えば「白熱電球60W相当」の明るさを持つLED電球の実際の消費電力は「7〜8W」程度です。
このため、器具の上限が60Wであっても、80W相当や100W相当の明るさ(ルーメン)を持つLED電球(消費電力は10〜13W程度)に交換できる場合がほとんどです。ただし、安全のため、使用する照明器具の取扱説明書でLED電球使用時の上限を必ず確認してください。
対策2:補助的な照明を追加する(工事不要)
電球の交換だけでは明るさが不足する場合、ペンダントライトの光が届いていない場所、特に部屋の隅や壁際を照らす「補助照明」を追加します。
具体的には、床に置く「フロアスタンド」や、カウンター・棚の上に置く「テーブルランプ」が有効です。これらの照明の光を壁や天井に向ける(アッパーライトとして使う)ことで、光が反射・拡散し、間接照明として空間全体を柔らかく明るく見せる効果が期待できます。
対策3:照明器具の数を増やす(要確認)
もし天井の配線器具が「ダクトレール(ライティングレール)」であれば、照明器具の数を増やすのが最も効果的です。例えば、ペンダントライトをもう1灯追加したり、角度を変えられるスポットライトを追加して壁を照らしたりすることができます。
既存の電源が「引っ掛けシーリング」1箇所のみであっても、市販の「簡易取り付けダクトレール」を設置することで、同様に照明の数を増やすことが可能です。ただし、この方法をとる場合は、天井の強度や配線器具の耐荷重(通常5kgや10kgまでなど制限があります)を事前にしっかり確認する必要があります。
邪魔・いらないと感じる設置位置とは
ペンダントライトが「邪魔」あるいは「いらない」と感じられる最大の理由は、設置する「高さ」と「位置」のミスマッチです。
最も多い失敗が、高さを低くしすぎることです。テーブルの上に低く吊り下げすぎると、食事を運ぶ際に頭をぶつけたり、座った時に視界に入って対面にいる人の顔が見えなくなったりします。これが続くと、日常生活で大きなストレスとなり得ます。

逆に、高すぎるとどうでしょうか。この場合は、光源が遠くなるため手元の明るさが不足し、せっかくのデザインもぼやけてしまいます。
また、テーブルの中心からずれた位置に設置してしまうと、見た目のバランスが悪いだけでなく、テーブルの片側だけが暗くなるなど、実用面でも問題が生じます。
後悔したポイント
デザインに惹かれて導入したものの、最終的に設置をやめた、あるいは後悔しているケースには、明るさや位置以外の理由も存在します。
模様替えの制約
ペンダントライトは、一度天井に電源位置(引っ掛けシーリングなど)を固定すると、その場所から動かすことができません。そのため、ダイニングテーブルの位置も照明に合わせて固定されることになり、将来的に家具の配置を変えたいと思っても、照明が基準となってしまい模様替えの自由度が著しく下がります。
掃除の手間
吊り下げ式であるため、シェードの上部にはホコリが非常に溜まりやすいというデメリットがあります。特にキッチンの近くでは、油を含んだホコリが付着することもあります。
目線に近い高さにあるためホコリが目立ちやすく、また高所での掃除になるため、こまめなメンテナンスを負担に感じる人も少なくありません。
安全面での懸念
ペンダントライトは構造上、地震や強風(窓を開けた際など)で揺れやすい特性があります。ガラス製や陶器製など割れやすい素材のシェードの場合、揺れによって照明同士がぶつかったり、最悪の場合は落下したりする危険性もゼロではありません。
ダイニングのペンダントライトで失敗しない選び方

配置する位置と何センチ離せばいいか
ペンダントライトの設置で失敗しないためには、「位置」と「高さ」の基準を知ることが不可欠です。
まず「位置」ですが、これは「ダイニングテーブルの真ん中(中心)」が絶対的な基本です。テーブル全体に光が均等に届くだけでなく、空間全体の見た目のバランスが整います。複数灯を設置する場合も、テーブルの短辺方向の中心線上に、長辺方向に沿って等間隔に並べるのが一般的です。
次に「高さ」ですが、これは使用シーンによって変わるものの、一般的な目安は「テーブルの天板(テーブル面)から照明器具のシェード下端までが60cm〜80cm程度」とされています。この高さは、座った人の視界を遮らず、かつテーブル上の料理を美味しく照らすのに適した距離感です。
テーブルサイズや家族の身長、ペンダントライトのデザインによって最適な高さは変わるため、以下の目安を参考に調整してみてください。
| 状況 | 推奨される高さ(天板からシェード下端) | 理由 |
| 一般的な目安 | 60cm 〜 80cm | 視界を遮らず、手元をしっかり照らせるバランスの良い高さ。 |
| 大型のテーブル | 70cm 〜 80cm | テーブル全体に光を広げやすくなる。低すぎると圧迫感が出やすい。 |
| 小型のテーブル | 60cm 〜 70cm | 光源を近づけ、手元の明るさを集中的に確保しやすい。 |
| 視界を重視する場合 | 80cm以上 | 対面の人の顔が確実に見えるが、手元はやや暗くなる可能性がある。 |
おしゃれと実用性を両立させるコツ
デザイン(おしゃれ)と実用性(明るさ・メンテナンス)を両立させるには、いくつかのコツがあります。
第一に、シェードの素材選びです。前述の通り、金属や陶器など光を通さないシェードは手元を強く照らしますが、空間は暗くなりがちです。逆におしゃれと明るさを両立させたい場合は、ガラスや和紙、布など、光を透過する(光が通り抜ける)素材のシェードを選ぶと良いでしょう。シェード自体が柔らかく光り、天井や壁にも光が回るため、空間全体の圧迫感を軽減できます。
第二に、メンテナンス性です。高所での作業となる電球交換の手間を最小限にするため、照明器具は「LED電球対応」または「LED一体型」の製品を選ぶことを強く推奨します。LEDは白熱電球や蛍光灯に比べて圧倒的に長寿命であるため、交換頻度を大幅に減らすことができます。
第三に、他の照明とのバランスです。ペンダントライトはあくまでアクセントやタスクライトと割り切り、部屋全体の明るさはダウンライトやブラケットライト(壁付け照明)で確保する「多灯分散」の計画を立てることが、おしゃれと実用性を両立させる最も確実な方法です。
失敗しにくいおすすめの機能
近年のペンダントライトには、失敗をカバーしたり、生活の質を高めたりする便利な機能が搭載されているモデルがあります。
調光機能(明るさの調整)
これは、生活シーンに合わせて明るさを変えられる機能です。食事の際は明るさを落としてリラックスした雰囲気に、子どもが勉強したり作業したりする際は明るさを最大にする、といった使い分けが可能になります。明るさが足りないという失敗を後からでも調整できるため、非常に有用な機能です。
調色機能(光色の調整)
これは、光の色味(電球色〜昼白色)を変えられる機能です。食事中はリラックスできる「電球色」、作業中は集中しやすい「昼白色」といったように、リモコン一つで切り替えられます。電球の色選びで後悔する心配がなくなります。
スマート電球への対応
既存のペンダントライトでも、電球を「スマート電球」に交換するだけで、スマートフォンやスマートスピーカー(音声アシスタント)から照明を操作できるようになります。オン・オフはもちろん、製品によっては調光や調色もアプリや音声で制御可能になり、利便性が飛躍的に向上します。
ニトリ製品を選ぶ場合の注意点
ニトリでは、デザイン性が高く手頃な価格のペンダントライトが多数ラインナップされており、魅力的な選択肢の一つです。ただし、設置にあたってはいくつかの注意点があります。
最も注意すべきは、取り付け可能な天井の種類です。ニトリの製品を含め、多くのペンダントライトは「平らな天井」に設置された「引っ掛けシーリング」を前提として設計されています。勾配天井(傾斜した天井)への設置に関しては、過去にニトリの公式回答として「安全性の確認ができないため推奨できない」とされたケースがあります。

メーカーが推奨していない方法での設置は、万が一の事故の際に保証が受けられない可能性があり、大変危険です。
また、購入前には、自宅の天井に設置されている「引っ掛けシーリング」や「ローゼット」の種類(角型、丸型、埋込型など)と、購入したい製品がその形状に対応しているかを、必ず取扱説明書や製品仕様で確認してください。
デザインや価格だけでなく、自宅の設置環境で安全に使用できるかを最優先に確認することが、ニトリ製品を選ぶ上で最も重要なポイントとなります。
ダイニングでのペンダントライト設置で失敗を防ぐコツ総括
ダイニングのペンダントライト選びで失敗や後悔をしないために、この記事で解説した重要なポイントを以下にまとめます。

