ブラケットライトの設置って穴開けないとダメ?
おしゃれなホテルやカフェでよく見かけるブラケットライト。壁面を照らす柔らかな光は、部屋に奥行きと雰囲気をもたらしてくれます。デッドスペースになりがちな壁を有効活用し、部屋全体をワンランク上の空間に演出できるため、自宅のインテリアに取り入れたいと考える方も多いでしょう。
ただ、賃貸住宅にお住まいの場合、壁に穴を開ける必要があるため設置を諦めていないでしょうか。「壁の穴は原状回復で問題になるのでは」「電気工事が必要そうでハードルが高い」と、工事不要で取り付けたい、とお考えの方も多いはずです。
実際、壁付け照明には工事不要 賃貸向けの製品も増えています。例えば、IKEA製ウォールランプの賃貸での使用例や、ニトリの壁付け工事不要のアイテムを探す方も少なくありません。コンセント式や充電式、あるいは取り付けの工夫次第で、壁に大きな穴を開けずに設置する方法が存在します。
この記事では、壁に穴をあけない ライトの設置方法や、具体的なウォールランプの取り付け方、賃貸での工夫についてメリット・デメリットや注意点を交えながら詳しく解説していきます。
ブラケットライトで穴を開けない設置の基礎知識

どんな種類がありますか?
ブラケットライトは、その光の広がり方や照らし方によって、主に3つのタイプに分類されます。それぞれの特徴を理解し、設置したい場所の目的(作業用の明かりか、リラックス用かなど)に合わせて選ぶことが大切です。
1. 直接光タイプ(スポットライトタイプ)
照らしたい場所に向かって、直接光を当てるタイプです。光が集中するため、手元や特定の対象物をはっきりと照らしたい場合に適しています。
例えば、書斎のデスク上で手元を照らす作業灯として、または廊下や階段で足元を安全に照らすため、洗面台の鏡周りで顔を明るく見せるため、さらには壁に飾った絵画やアートを際立たせるスポットライトとしても活躍します。アームが可動するタイプも多く、照らしたい場所をピンポイントで狙える機能性も魅力です。
2. 間接光タイプ
光源が直接目に入らず、光を壁や天井、あるいは床に一度反射させて、その反射光で空間を柔らかく照らすタイプです。
光が拡散するため、非常に優しく穏やかな雰囲気を作り出します。眩しさを感じにくく、リラックスして過ごしたい寝室(枕元)やリビングルームに最適です。壁や天井に光が広がることで、空間に奥行きが生まれ、部屋を広く見せる視覚効果も期待できます。陰影のコントラストが生まれ、ドラマチックな空間演出にも向いています。
3. 拡散光タイプ
シェード(笠)を通して光が広がり、照明器具の周囲全体を柔らかく照らすタイプです。直接光と間接光の中間的な性質を持ちます。
シェードの素材(光を通す布や和紙、半透明のガラス、光を反射させる金属など)によって、光の質感や広がり方が大きく変わるのも特徴です。空間全体の明るさ感を確保しつつ、器具そのもののデザインも楽しみたい場合に適しており、玄関ホールや廊下、リビングの補助照明としてなど、多くの場所で使いやすい汎用性の高いタイプと言えます。
【比較表】ブラケットライトの主なタイプ
| タイプ | 光の広がり方 | 主な用途 | 空間への効果 |
| 直接光タイプ | 一点に集中 | 手元・足元、特定の対象物を照らす | メリハリがつく 対象物が際立つ |
| 間接光タイプ | 壁や天井に反射 | 寝室、リビング (リラックス空間) | 柔らかい雰囲気 部屋が広く見える |
| 拡散光タイプ | 全体に広がる | 玄関、廊下、補助照明 | 全体を均一に照らす 器具のデザイン性 |
自分で交換できますか?
ブラケットライトの交換については、「何を交換するか」によって、ご自身でできる範囲と専門資格が必要な範囲が明確に分かれています。
まず、電球やLED照明ユニットの交換であれば、ご自身で行える場合がほとんどです。ただし、照明器具によって対応する電球の口金サイズ(E26、E17など)や種類(LED専用、白熱電球可など)、ワット数(消費電力)の上限が厳密に決まっています。
これを間違えると、点灯しないだけでなく、器具の過熱による火災や故障のリスクも考えられます。交換の際は、必ず取扱説明書や器具本体の表示を確認してください。
一方、ブラケットライト本体の交換や新設には細心の注意が必要です。
すでに壁に配線が来ており、古い器具と新しい器具を交換するだけであっても、壁の中の電線を直接触る作業(結線作業)が発生します。この作業は「電気工事士」の国家資格が必須となります。
ましてや、壁の内部に配線が通っていない場所に新しくライトを設置する場合、コンセントやスイッチから壁内に電線を引き込む「配線工事」が発生します。
【警告】資格のない電気工事は絶対に危険です
- 電気工事士の資格を持たない素人が配線作業を行うことは、法律で固く禁止されています。
- 不適切な工事は、漏電による感電事故や、配線のショート・過熱による火災など、命に関わる重大な事故に直結します。
- 費用を節約しようとDIYで行うのは絶対にやめてください。必ず専門の業者に依頼する必要があります。
工事不要で使えるブラケットとは
壁に穴を開けたり、前述のような専門的な配線工事をしたりせずに設置できるブラケットライトも存在します。その代表格が「コンセントタイプ」のブラケットライトです。

これは、照明器具本体から電源ケーブルが伸びており、そのプラグを家庭用のコンセントに差し込むだけで点灯する仕組みのものです。壁に照明本体を固定する作業は必要ですが、電気配線工事が一切不要なため、賃貸住宅でも気軽に導入できるのが最大のメリットです。
コンセントタイプであれば、電気工事士の資格ももちろん不要で、購入したその日に設置することも可能です。デザインも豊富で、アームが動かせる機能的なものから、インテリアの主役になるデザイン性の高いものまで選べます。
ただし、電源ケーブルが壁を伝うことになるため、そのままでは配線が目立ってしまい、見た目がスッキリしないというデメリットがあります。この点は、後述するケーブルカバーなどで工夫することで解消できます。
また、最近では「充電式」や「電池式」の壁掛けライトも増えています。これらは電源ケーブルすら不要で、マグネットや両面テープで固定する製品が多く、さらに手軽な選択肢と言えます。
賃貸でも設置できる?基本ルール
賃貸住宅でブラケットライトを設置する際に、最も重要な障壁となるのが「原状回復義務」です。これは、退去時に部屋を入居時と同じ状態(ただし、普通に生活していて生じる経年劣化や通常損耗は除く)に戻す義務のことを指します。
原状回復とは、アパートなど賃貸住宅の賃貸借契約が終了して借主(賃借人)が退去する際に、借りた部屋を「本来あるべき状態」、つまり入居時の状態に戻して貸主(賃貸人)に返す義務のことです。
SUUMO公式ページより
この「通常損耗」の範囲がどこまでかが問題となります。
賃貸の「原状回復」に関するガイドライン
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、この基準の一つの目安を示しています。
- 修繕費の負担が不要(通常損耗)とされる例:
- カレンダーやポスター等を貼るための画鋲(がびょう)やピンの穴
- エアコン設置によるビス穴(一般的なもの)
- 修繕費の負担が必要(通常損耗を超える)とされる例:
- 釘穴、ネジ穴(重量物をかけるために開けたもので、下地ボードの張替えが必要な程度のもの)
このガイドラインによれば、画鋲やごく細いピンの穴は許容されるケースが一般的です。
しかし、ブラケットライトの固定に使うような「ネジ」や「釘」の穴は、壁紙だけでなく、その下にある石膏ボード(下地)にまで深く達することが多く、穴も大きくなります。これは「通常損耗を超える」と判断され、退去時に修繕費用を請求される可能性が非常に高くなります。
したがって、賃貸でブラケットライトを設置する場合は、以下のいずれかの方法を選ぶことが鍵となります。
- ネジや釘を使わずに固定する方法(粘着、マグネット、突っ張りなど)を選ぶ。
- ネジの代わりになる、穴がごく小さい「石膏ボード用ピン」などで固定できる、軽量な照明器具を選ぶ。
壁に穴をあけないその他タイプ
ネジを使わずに壁面を照らすライトには、いくつかのタイプがあります。これらは厳密にはブラケットライトとは異なりますが、壁面照明として非常に有効な選択肢です。
1. マグネット式
一つ目は、本体に磁石が内蔵されており、金属面に固定するマグネット式です。

冷蔵庫の側面、スチール製のデスクや棚、ユニットバスの壁(鋼板が使われている場合)、または玄関の金属製ドアなどに手軽に取り付けられます。配線不要の充電式や電池式のLEDバーライト(例: Baseus, Goveeなど)が多く、人感センサー付きのものを選べば、玄関やクローゼットの自動点灯ライトとしても非常に便利です。
- メリット: 取り付け・取り外しが瞬時にでき、移動も自由。
- デメリット: 設置場所が金属面に限られる。
2. 粘着・両面テープ式
二つ目は、3Mのコマンドタブのような強力な両面テープや粘着シートで固定するタイプです。
最近は、壁紙を傷めずにきれいに剥がせるタイプのテープも増えており、賃貸でも安心して使用しやすいのが特徴です。IKEAの「STÖTTA(ストッタ)」シリーズのLEDライトバーや、SwitchBotのナイトライトなどがこれに該当します。
- メリット: 設置場所の自由度が高い(金属面以外でもOK)。
- デメリット: 壁紙の種類や凹凸、経年劣化の状態によっては、剥がす際に壁紙を傷めてしまう可能性があります。また、重い照明の固定には向きません。
3. 突っ張り棒 + クリップ or 挟む式
三つ目は、壁と壁の間、あるいは床と天井の間に突っ張り棒を設置し、そこにクリップライトを挟んで固定する方法です。
これは壁に一切触れずに照明を追加できる優れたアイデアです。また、ベッドのヘッドボード、デスクの天板、本棚の棚板などに直接クリップライト(例: 無印良品、YAMAZENなど)を挟んで固定し、壁面を照らす間接照明として使う方法もあります。
- メリット: 壁を一切傷つけない。位置の調整が容易。
- デメリット: 突っ張り棒やクリップの見た目が気になる場合がある。設置スペースが必要。
ブラケットライトで穴を開けない具体的な方法

工事不要!賃貸向けライトの設置アイデア
前述の通り、電気工事不要でブラケットライトの雰囲気を楽しむ最も手軽で本格的な方法は、上で触れたコンセントタイプの照明を選ぶことです。
コンセントタイプを選ぶ際は、デザインだけでなく機能面も確認しましょう。アームが伸縮したり、シェードの角度が変えられたりするものであれば、読書灯や作業灯としてピンポイントで照らすことができ便利です。また、電源ケーブルの途中にスイッチがあるか、本体にスイッチがあるかも使い勝手を左右します。
もし、設置したい場所の近くにコンセントがない場合や、配線がどうしても気になる場合は、「充電式(バッテリー内蔵型)」のウォールライトが強力な選択肢となります。

これらは配線が一切不要で、付属のベースを壁に固定し、本体をマグネットなどで着脱して充電するタイプが主流です。
- メリット: 電源ケーブルが不要なため、見た目が非常にスッキリする。コンセントの位置に関わらず、好きな場所に設置できる。
- デメリット: 定期的に本体を取り外して充電する手間がかかる。常時点灯させる用途には向かず、明るさや点灯時間にも限りがある製品が多い。
ウォールランプの取り付け方・賃貸での工夫
賃貸住宅でコンセントタイプのウォールランプを取り付けるには、壁をできるだけ傷つけないための工夫が求められます。ここでは3つの主要な方法を紹介します。
1. DIYで柱を立てる(ディアウォール等)
壁に直接穴を開けられない場合の、最も自由度が高く強力な解決策が、DIYで新たな「柱」を立ててしまう方法です。
ホームセンターなどで手に入る2×4(ツーバイフォー)材と、「ディアウォール」や「ラブリコ」といった突っ張り金具(アジャスター)を使います。これらは、木材の両端に取り付け、床と天井の間で突っ張らせることで、壁を傷つけずに簡易的な柱を設置できるアイテムです。
この柱になら、ネジを使おうと塗装をしようと自由です。コンセントタイプのブラケットライトをこの柱にしっかりとネジで固定すれば、壁を一切傷つけることなく本格的な壁掛け照明が実現します。
2. 電源ケーブルを隠す(配線モール)
コンセントタイプで避けられない電源ケーブルの露出は、「ケーブルカバー(配線モール)」を使うと美しく隠せます。
これはプラスチック製のカバーで、中にケーブルを通して壁に這わせるものです。壁紙の色に近い白やアイボリー、または木目調や黒など、インテリアに合わせた色を選べば、存在感を最小限に抑えられます。
壁にカバーを固定する際は、粘着テープ付きの製品が多いですが、賃貸の場合は注意が必要です。強力な両面テープは剥がす際に壁紙を破損させる恐れがあります。
対策として、まず壁に壁紙保護用の「マスキングテープ」を貼り、その上から(マスキングテープの幅に収まるように)「剥がせるタイプの両面テープ」でケーブルカバーを固定するのがおすすめです。
3. 石膏ボード用のピンを活用する(ネジの代用)
照明器具本体を壁に固定する際、ネジの代わりになるアイテムを活用します。日本の住宅の壁の多くは石膏ボードでできており、専用のピンが有効です。
【比較表】ネジの代用になる固定具(石膏ボード用)
| 種類 | 特徴 | 固定方法 | メリット | 注意点 |
| 壁美人 | 専用金具をホッチキスで固定 | 180度開くホッチキスで多数の針を打ち込む | 穴が非常に小さい。耐荷重が高い(例: 6kg, 12kg)。 | 専用金具・フィルム・針が必要。 |
| 石膏ピン | 細いピンをクロスさせて固定 | コインや専用工具でピンを壁に押し込む | 比較的簡単。穴が画鋲程度。耐荷重も様々。 | 照明器具の固定穴の形状と合うか確認が必要。 |
| フック | ピンで固定するフック | 石膏ボード用ピンでフックを固定 | 手軽。100円ショップでも入手可。 | 照明器具側に「引っ掛ける穴」が必要。 |
これらのアイテムを使えば、ネジ穴よりもはるかに小さい穴(画鋲程度かそれ以下)で済み、退去時の原状回復が容易になります。ただし、必ず「取り付けたい照明器具の総重量」が、これらのピンの「静止耐荷重」を下回っていることを確認してください。
IKEA製ウォールランプの賃貸での活用法
IKEA(イケア)は、デザイン性が高く機能的なウォールランプを多数取り揃えており、その多くは賃貸住宅でも使いやすい仕様(コンセント式)になっています。
例えば、「SKURUP(スクルプ)」シリーズのウォールランプは、黒や白のマットな金属製で、インダストリアルデザインが特徴です。

コンセント式でありながらアームが上下左右に可動するデザインで、ベッドサイドの読書灯やデスクライトとして非常に人気があります。「ÅRSTID(オースティード)」は、布製のシェードが優しい光を拡散させる定番商品で、クラシックな雰囲気を持ち、これもコンセントに対応しています。
また、最近の注目株である「VARMBLIXT(ヴァルムブリクスト)」は、オレンジ色のガラス製ドーナツ型LEDランプで、テーブルランプとしてもウォールランプとしても使える兼用タイプです。壁掛け用の金具が付属しており、コンセント式なので賃貸でも壁のアクセントとして導入しやすいです。
IKEAの製品を選ぶ際は、オンラインストアの商品説明で電源タイプが「コンセント式」であること、または「配線工事不要」であることが明記されているかを確認しましょう。軽量なモデル(1kg以下など)であれば、前述の石膏ボード用ピンなどで固定することも十分に検討できます。
【壁付け工事不要】ニトリの商品例
ニトリにおいても、壁付けで工事不要の照明を手軽に探すことができます。
公式(2025年11月時点)によると、ニトリではIKEAのようなアーム式ブラケットライト(コンセント型)の取り扱いは少ない傾向がありますが、その代わりにより手軽な「補助照明」が充実しています。
例えば、両面テープで固定できる「LEDプッシュライト」や、人感センサー付きの「LEDセンサーライト」は、電池式で配線が一切不要なため、クローゼット内、納戸、廊下の足元灯として最適です。

また、「LEDモバイルライト(WML01)」のように、持ち運びが可能で、充電式、かつ壁掛け用のフック穴が備わっている製品もあります。これを石膏ボード用のピンフックに引っ掛けるだけで、簡単に壁付け照明として使用できます。
ニトリのオンラインストアでは「ウォールライト」や「壁掛け ライト」で検索すると関連商品が見つかりますが、検索結果にはペンダントライトやシーリングライトも多く含まれます。そのため、フィルター機能を使うか、商品説明をよく読み、電源方式が「コンセント式」か「電池式」「充電式」であることを確認することが大切です。
ブラケットライトは穴を開けない工夫でおしゃれに【総括】
この記事で解説してきたブラケットライトを穴を開けずに設置する方法についての要点を、最後にまとめます。賃貸だからと諦めず、工夫次第でおしゃれな壁面照明を楽しみましょう。

