こんにちは。照明セレクション、運営者の「ミト」です。
ハイエースの広大な車内空間を、まるで自室のリビングのようなリラックス空間に変える間接照明。DIYでのカスタムや専用キットの導入を検討している方も多いのではないでしょうか。しかし、いざ「やってみよう!」と思い立っても、「配線が複雑そうで自分にできるか不安」「頑張って取り付けたのに車検に通らなかったらどうしよう」「天井やカーテンレールへどうやって固定すればいいの?」といった疑問や不安が尽きませんよね。
実は、私自身も最初は電気の知識がほとんどなく、配線の接続ミスでヒューズを飛ばしてしまったり、夏場の暑さでLEDテープが剥がれ落ちてきたりと、数々の失敗を経験してきました。ですが、そうした経験を通じて正しい知識とちょっとした「プロのコツ」さえ掴んでしまえば、特別な資格がなくても安全で、しかも純正オプションのような美しいライティングを実現することは十分に可能です。
この記事ではハイエースの技術的なノウハウや、法規(車検)に関する重要な知識を、初心者の方にも分かりやすく噛み砕いて余すことなくお伝えします。
ハイエースの間接照明で失敗しないための基礎知識と選び方

間接照明の導入にあたって、まず最初に押さえておきたいのが「法律(車検)」のルールと、空間演出の肝となる「光源(LED)」の選び方です。
ここを間違えてしまうと、どんなに綺麗に取り付けても「整備不良」として取り締まりの対象になったり、イメージしていた雰囲気と違って安っぽくなってしまったりと、全てが水の泡になってしまうリスクがあります。
車検に通る色と明るさのルール
ハイエースの車内照明をカスタムする際、ユーザーが最も恐れるリスクであり、かつ最も気をつけなければならないのが「車検対応(保安基準適合)」かどうかの境界線です。
道路交通法では、車の各パーツは法律の定める基準に適合していなければならず、この基準をクリアしたものを「保安基準適合品」と言います。
グーネットより引用
インターネット上には「車内なら何でもOK」といった曖昧な情報も散見されますが、これは大きな間違いです。基本的には、道路運送車両の保安基準における「その他の灯火類」や「室内照明灯」としての厳格なルールを守る必要があります。
絶対に避けるべきNGカラーとリスク
まず、車検において即座にNG判定を受ける可能性が高いのが「赤色」と「橙色(アンバー)」の光源です。

これらは、後方から見た際に「尾灯(テールランプ)」や「方向指示器(ウィンカー)」と誤認されるリスクがあるため、原則として使用が禁止されています。たとえ車内の照明であっても、夜間に窓ガラス越しに外部から光漏れが確認できる場合、これらの色は指摘を受ける可能性が極めて高くなります。
また、フロントガラスの上方などに「青色」や「紫色」の照明を設置することも避けるべきです。これらは緊急車両の回転灯と誤認される恐れや、他の交通の妨げになる可能性があるため、検査官の裁量によっては「不適切」と判断されるケースが多く見られます。
「個性を出したい」という気持ちは分かりますが、無用なトラブルを避けるためには奇抜な色は避けるのが無難です。
運転席周りへの光の映り込み(グレア)対策
色だけでなく、「設置場所」と「明るさ」も重要です。特に注意したいのが、「運転席および助手席の窓ガラスへの映り込み」です。
夜間走行中、車内が明るすぎると窓ガラスが鏡のようになり、サイドミラーや外の歩行者が見えにくくなってしまいます。これは安全運転義務違反に問われるだけでなく、車検場でも「運転操作を妨げる灯火」として整備不良の指摘を受ける原因となります。
車検適合と安全のための推奨設定
- 推奨色:誰からも指摘されにくい「白色」または「電球色(3000K〜6500K)」を選ぶこと。
- 遮光対策:カーテンレール照明などが直接運転席を照らさないよう、つば(遮光板)を設ける。
- キルスイッチ:走行中はすべての装飾照明をOFFにできるよう、運転席の手元にスイッチを設置する。
車検の検査ラインでは室内灯を細かくチェックされることは稀ですが、検査官は「保安基準に適合しない状態」を目視で確認した場合、是正を求める権限を持っています。
後ほど紹介するスイッチやリレーを使って、状況に応じてコントロールできる仕組みを作っておくことが、大人のカスタムの嗜みと言えるでしょう。(出典:国土交通省『道路運送車両の保安基準』)
LEDテープは「COB」と「SMD」どっちがいい?
次に、間接照明の主役となるLEDテープの選び方について解説します。Amazonや楽天でLEDテープを検索すると膨大な種類が出てきますが、大きく分けて従来型の「SMD方式」と、最新の「COB方式」の2種類が存在します。結論から言うと、ハイエースの間接照明として使うなら、断然「COB方式(FOB)」をおすすめします。
SMD方式の弱点「粒々感」と「影」
これまで主流だったSMD(Surface Mount Device)方式は、5050や3528といった小さな四角いLEDチップが等間隔(例えば3cmおき)に並んでいるタイプです。

これを間接照明として使うと、壁や天井との距離が近い場合に、光が「粒々」としたドット状に見えてしまったり、壁面にチップの個数分の「影」が投影されてしまったりすることがあります。これでは、いかにも「後付けしました」という雰囲気が出てしまい、高級感のある仕上がりとは言えません。
COB方式が選ばれる理由「シームレスな光」
一方、近年普及が進んでいるCOB(Chip On Board)方式は、高密度のLEDチップ全体を蛍光体でコーティングしているため、まるでネオン管のように「途切れのない一本の光の線」としてシームレスに発光します。
ハイエースのカーテンレールの隙間や、内張りのわずかなスペースは、照射面までの距離が数センチしかないことがほとんどです。こうした狭小スペースでも、COB方式なら光が柔らかく均一に広がり、影が出ません。また、SMDタイプに比べてテープ自体の柔軟性が高く、全体が均一に曲がるため、ハイエース特有の内装のカーブにも綺麗に追従してくれる点も大きなメリットです。
COB LED導入の注意点
COBタイプは発光密度が高いため、SMDタイプよりも発熱しやすい傾向があります。可能であれば、放熱効果のあるアルミチャンネル(アルミのレール)に貼り付けて設置すると、熱による劣化を防ぎ、長寿命化につながります。
色温度で変わる車内の雰囲気と演出
「どんな空間にしたいか」を決めるのが、光の色味を表す「色温度(ケルビン:K)」です。ハイエースを単なる移動手段として使うのか、それとも「動く部屋」として使うのかによって、選ぶべき色は明確に分かれます。
「電球色」で実現する高級ラウンジ空間
もしあなたが、車中泊やバンライフ、あるいは友人や家族とのリラックスした移動時間を重視するなら、迷わず「電球色(Warm White, 約3000K)」を選んでください。
電球色は、夕日のような温かみのあるオレンジがかった光で、人間の副交感神経を優位にし、リラックスさせる効果があります。特に、ハイエースのカスタムで人気の高い「木目調」のインテリアパネルや、レザーシートとの相性が抜群です。多くの高級車やホテルのラウンジで電球色が採用されているように、この色を選ぶだけで一気に車内のグレードが上がったような高級感を演出できます。
実用性重視の「昼白色」と「昼光色」
一方で、車内で食事をしたり、読書をしたり、あるいは荷物の積み下ろしなどの作業を行ったりすることが多い場合は、自然な太陽光に近い「昼白色(Natural White, 約4000K〜4500K)」が適しています。
ものの色が自然に見え、文字も読みやすいため、実用性と雰囲気のバランスが良い万能選手です。
また、「昼光色(Cool White, 約6000K以上)」は、青白いクールな光です。視認性が高く、細かい作業をするには最適ですが、夜間のリラックスタイムには刺激が強すぎて目が冴えてしまうことがあります。サイバーで近未来的なカスタムを好む方にはマッチしますが、居心地の良さを求めるなら避けたほうが無難かもしれません。
さらにこだわるなら「調光器」を!
間接照明の失敗あるあるが「明るすぎて落ち着かない」こと。就寝時はほんのり明るく、作業時は全開にできるよう、ダイヤル式やリモコン式の「調光器(ディマー)」を回路に組み込んでおくことを強くおすすめします。
初心者でもできる!ハイエース間接照明の取り付けと配線

ここからは、実際にLEDを取り付けるための具体的な施工手順と配線テクニックについて解説します。「電気配線なんてやったことがないから怖い」という方でも理解できるよう、専門用語を噛み砕いてステップバイステップで説明していきます。
電源はヒューズボックスから取るのが基本
LEDを点灯させるための電気をどこから持ってくるか。バッテリーから直接引く方法(バッ直)などもありますが、ハイエース200系において最も安全で、かつ確実なのが、助手席の足元、グローブボックスの下にある「ヒューズボックス」からの取り出しです。ここから電源を取れば、万が一ショートした際もヒューズが切れてくれるため、車両本体の配線を焼き切るような重大事故を防ぐことができます。
電源の種類と選び方
ヒューズボックスには様々な役割のヒューズが並んでいますが、照明用として使うのは主に以下の2種類です。
| 電源名称 | 動作の仕組み | おすすめの使用シーン |
|---|---|---|
| ACC電源 (アクセサリー電源) | キーを1回回す(またはプッシュスタート1回)と電気が流れる。エンジンOFFで完全に切れる。 | 最も推奨! 切り忘れによるバッテリー上がりの心配がないため、一般的な間接照明にはこれを使います。ヒューズ位置は「ACC NO.5 (15A)」などが定番です。 |
| 常時電源 (バッテリー電源) | キーの状態に関わらず、24時間常に電気が流れている。 | ドアを開けた時に光る「ウェルカムライト」などに使用。ただし、スイッチを切り忘れるとバッテリーが上がるため注意が必要。「STOP NO.1 (10A)」などから取ります。 |
最重要!「低背ヒューズ」と「極性」の確認
ハイエース(特に4型以降の現行モデル)では、主に「低背(ていはい)ヒューズ」という小型のヒューズが採用されています。ホームセンターで購入する際は、形を間違えないように注意してください。
そして、ヒューズ電源を取り出す際に最も重要なのが「極性(電気の流れる向き)」の確認です。ヒューズが刺さっている2つの穴には、「電気が来ている側(電源側)」と「電装品へ行く側(負荷側)」があります。
必ず「検電テスター」を使用し、ヒューズを抜いた状態でキーを回し、どちらの穴に電気が来ているかを確認してください。そして、ヒューズ電源取り出しコードから出ている線が、正しい向き(製品の説明書に従うが、一般的には管ヒューズが付いている側が負荷側へ流れるように)になるよう差し込みます。これを逆にすると、何かあった時にヒューズが機能せず、危険です。
スライドドア連動にはリレーが必要
「スライドドアを開けた瞬間、足元がふわっと光る」。そんな高級車のような演出(ウェルカムライト)に憧れる方も多いでしょう。しかし、これを実現するには少し専門的な知識が必要です。
ハイエースの「マイナスコントロール」の罠
ハイエースのドアスイッチ(カーテシ線)は、「マイナスコントロール」という制御方式をとっています。これは、「ドアが開いた時にマイナス線がつながって電気が流れる」という仕組みです。 初心者がやりがちなミスが、LEDのマイナス線を直接このカーテシ線に繋いでしまうことです。
これをやると、予期せぬ電流が回り込んで車両のコンピューター(BCM)を破損させたり、ドアを閉めているのにLEDがぼんやり光り続ける「ゴースト点灯」が発生したりするリスクがあります。
「4極リレー」で安全に連動させる
こうしたトラブルを防ぐために、必ず「4極リレー(A接点)」という部品を回路に組み込みます。リレーとは、小さな電気信号で大きな電気のスイッチを入れる「遠隔スイッチ」のようなものです。
- コイル側(青・黒線など):ここに「常時電源」と「ドアスイッチ線」を繋ぎます。ドアが開くとコイルに電気が流れ、磁石の力でスイッチがONになります。
- スイッチ側(赤・黄線など):ここに「LED用の電源」と「LED本体」を繋ぎます。
この仕組みを使うことで、車両側の繊細な信号線と、LEDを光らせるための電力線を完全に切り離すことができ、安全に連動させることが可能になります。「配線図を見ると頭が痛くなる」という方は、UIビークルやエーモンから販売されている「スライドドア連動キット」などを利用するのも賢い選択です。
天井やカーテンレールへの設置テクニック
間接照明の美学は「光源を見せないこと」に尽きます。LEDテープの粒々が直接目に入ると眩しいですし、何より安っぽく見えてしまいます。ここでは、プロが行う「光源隠し」のテクニックを紹介します。
カーテンレールと「幅木」の合わせ技
ハイエースの窓枠上部にあるカーテンレールは、間接照明の設置場所として最適です。しかし、ただレールの上に貼るだけでは、座る位置によってLEDが見えてしまうことがあります。 そこで活躍するのが、ホームセンターの建材売り場にある「プラスチック製の幅木(はばき)」や「L字アングル」です。

これらをカーテンレールの上に逆さに(L字が上を向くように)両面テープで固定し、その裏側にLEDテープを貼り付けます。こうすることで即席の「堤防」ができ、光だけが天井に向かって反射する、理想的な間接照明が完成します。
天井内張りの隙間を活用する
もう一つの人気スポットは、天井の内張り(ルーフライニング)とボディの隙間です。ハイエースのリアゲート側から内張りのクリップをいくつか外し、少し下げて隙間を作ります。
そこに薄型のCOB LEDテープを仕込みます。 配線は、天井裏を通してCピラーやDピラー(車体の柱)の内部を通し、下まで落とせば完全に隠すことができます。配線通し(ガイドワイヤー)を使うとスムーズですが、天井裏には鋭利な鉄板もあるため、配線が擦れてショートしないよう、コルゲートチューブなどで保護することをお忘れなく。
すぐ剥がれる!を防ぐプロの固定術
DIYにおける最大の敵、それは「熱」です。真夏のハイエースの車内温度は70℃を超えることもあり、安価なLEDテープに最初から付いている両面テープの粘着剤はドロドロに溶け、あっという間に剥がれ落ちてしまいます。「朝起きたらLEDが首吊り状態になっていた...」なんて悲劇を避けるために、ここだけは手間を惜しまないでください。
寿命の9割を決める「脱脂」と「プライマー」
ハイエースの内装パーツの多くはポリプロピレン(PP)などの樹脂製で、もともとテープが付きにくい素材です。さらに、艶出しのための保護剤(クレポリメイトなど)が塗られていると、絶対にテープは付きません。
絶対に剥がさないための3ステップ
- 徹底的な脱脂(Degreasing): まず、貼り付ける場所を「シリコンオフ」や「パーツクリーナー」で拭き上げます。雑巾が黒くなるくらい、油分と汚れを完全に除去してください。これが接着力の9割を決めます。
- プライマー処理: 次に、3Mの「K-500」などの接着促進剤(プライマー)を薄く塗布し、乾燥させます。これにより、樹脂表面の状態が変化し、強力な接着力が生まれます。
- 強力テープへの貼り替え: LEDテープ付属の両面テープは信用せず、一度全て剥がしてから、「3M製 車両用強力両面テープ(VHBシリーズなど)」に貼り替えてください。耐熱性が段違いです。
最後に、配線の重みがかかるコネクター接続部分は、コードレールやホットボンドを使って物理的にガッチリ固定し、LEDテープ自体に引っ張る力がかからないように工夫しましょう(応力緩和)。これらを徹底すれば、数年は剥がれることのないプロ並みの耐久性を実現できます。
いかがでしたでしょうか。少しハードルが高く感じるかもしれませんが、一つ一つの工程には必ず「理由」があります。安全と法規を守り、丁寧な作業を積み重ねれば、あなたのハイエースは単なる車を超え、いつまでも過ごしていたくなる最高のプライベート空間へと進化します。ぜひ、次のお休みにチャレンジしてみてくださいね。

