こんにちは。照明セレクション、運営者の「ミト」です。
毎日の暮らしに欠かせない照明ですが、最近は100円ショップでも本格的なLED電球が手に入るようになりましたよね。ダイソーの棚にずらりと並ぶ電球を見て、「安すぎて逆に怖い」「発火したり火事になったりしないかな」と不安に感じていませんか。
実際にグーグル検索で調べようとすると、候補に「点滅」や「寿命」「焦げ臭い」といった穏やかではないキーワードが出てくるので、どうしても心配になってしまうのは当然のことだと思います。実は、私たちが感じるその不安には、明確な技術的理由と、それを回避するための正しい対処法が存在します。
この記事では、ダイソーのLED電球に関する「発火」などの悪い噂の真相や、煙などのトラブルを避けて安全に使うためのポイントについて、照明好きとしての私の経験も交えながら、徹底的に深掘りしてお話しします。
ダイソーのLED電球は発火する?不安の真相

まずは、皆さんが一番心配している「本当に発火するの?」という点について、真っ正面から見ていきましょう。インターネット上で見かける怖い噂の背景や、実際に起きている現象の正体、そしてメーカーが公表している情報を整理して、漠然とした恐怖の正体を解き明かします。
危険と言われる検索意図の分析
GoogleやYahoo!などで「ダイソー LED 電球」と検索窓に入力した際、サジェスト機能(予測変換)によって「発火」「火事」「危険」「爆発」といったショッキングな言葉が表示されることがあります。これを見ると、「えっ、実際に燃えた人がたくさんいるの?」と背筋が凍るような思いをしてしまうかもしれません。
しかし、冷静に分析してみると、これらの検索ワードが多いからといって、必ずしもダイソーの電球が頻繁に火を噴いているわけではないことが分かります。実はこれ、「安すぎて怖いから、買う前に念のため安全性を確認したい」という、消費者の予防的な検索行動が大多数を占めているんです。

私たち消費者には「安かろう悪かろう」という経験則がありますよね。「数百円の家電製品なんて、すぐに壊れるに違いない」「電気を使うものだから、万が一のことがあったら怖い」という心理が働き、購入前にリスクを回避しようとして「発火」という言葉を含めて検索するのです。つまり、これは事故の報告件数そのものよりも、「不安の総量」を可視化したものだと言えます。
もちろん、中には「実際に使っていたら焦げ臭いにおいがした」「煙が出た」というトラブルに遭遇し、解決策を求めて検索する方も一定数いらっしゃいます。
Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトを見ても、「電球の根元が茶色くなった」「点滅が止まらない」といった相談は見受けられますが、それらが直ちに家屋を焼き尽くすような火災に繋がったという事例は極めて稀です。多くのユーザーは、異常を感じた時点で怖くなって使用を中止しているため、大事に至っていないのが現状です。
このセクションでは、そうした「検索キーワードの裏側にある心理」を理解することで、まずは必要以上に怯える必要はないということをお伝えしたいと思います。
過去のリコールと事故の件数
では、客観的なデータとして、実際にダイソーのLED電球が原因で大きな火災事故が起きているのでしょうか?公的な事故データを管理している独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)などの情報を詳しく調べてみましたが、LED電球そのものの設計ミスによる自然発火事故は、皆さんが想像するよりもはるかに少ないのが実情です。
NITEが公表している照明器具に関する事故データを見ると、2014年から2023年の10年間で照明器具全体の事故は約900件報告されていますが、その中で「蛍光灯照明器具をLEDランプに交換する際」の事故、つまり電球の交換に関連するトラブルは、確認されているだけで12件(2024年9月集計時点)です。
NITE が受け付けた製品事故情報のうち、2015 年から 2024 年までの 10 年間に発生した「不適切なラ
NITEより引用
ンプ交換による事故」12 件について、事故内容の内訳を以下の表 1 に示します。
しかも、その多くは「組み合わせの誤り」や「不適切な取り付け」によるもので、電球が勝手に発火したケースとは異なります。
(出典:NITE(製品評価技術基盤機構)『さらば蛍光灯、ようこそLED ~でもランプ交換 ミスると事故に』)
知っておきたいリコール情報の詳細
「でも、ダイソーでリコールがあったって聞いたよ?」という方もいるかもしれません。確かに、過去にはダイソー関連で「コード付タップ」の回収(内部金具の緩みによる発熱の恐れ)がありました。
このたび、ダイソー店舗にて販売したコード付きタップにて、
ダイソー公式より引用
内部の金具にゆるみがあるものがあることがわかりました。
お買い求めのお客さまには多大なるご迷惑をおかけし深くお詫び申し上げます。
また、記憶に新しいところでは2023年に「LED電球(60W形など)」の一部自主回収が行われています。
しかし、この2023年の電球回収の理由を詳しく見ると、「材質表示の誤記」でした。具体的には、放熱部分のプラスチック材質を「ポリブチレンテレフタレート(PBT)」と表示すべきところを「ポリアミド(PA)」と間違えて記載してしまった、というものです。
これは法律(家庭用品品質表示法)に基づく表示のミスであり、製品の安全性そのものに欠陥があって発火するから回収された、というわけではありませんでした。
このように、データやリコールの内容を正しく読み解くと、「ダイソー製品だからといって、粗悪品で勝手に燃え出す」というイメージは少し行き過ぎたものであることが分かります。むしろ、事故の多くは、後述するような「人間側の使い方の間違い」や「照明器具側の老朽化(ソケットの劣化など)」に起因しているケースが圧倒的に多いのです。
点滅やちらつきは故障のサイン
「ダイソーのLED電球に変えてから数ヶ月で、チカチカ点滅するようになった」「スイッチを入れると一瞬遅れてつく」といった経験はありませんか?これは「フリッカー」と呼ばれる現象で、ダイソー製品に限らず安価なLED電球でよく報告されるトラブルの一つです。
なぜ点滅してしまうのでしょうか。その最大の原因は、電球の根元部分に詰め込まれている電源回路(特に電解コンデンサという部品)の劣化や不具合にあります。LED電球は、家庭用の交流電気(100V)を、LEDチップが光るための直流電気に変換する必要があります。この変換を行う回路の性能が、電球の寿命や光の質を大きく左右します。
ダイソーなどの低価格なLED電球は、コストを極限まで抑えるために、部品点数を減らしたり、耐熱性の低い安価な部品を使ったりする傾向があります。そのため、大手メーカー製(パナソニックや東芝など)に比べると、電圧の微細な変動に弱かったり、自らが出す熱で部品がダメージを受けやすかったりします。
例えば、同じコンセントに繋がっているドライヤーや電子レンジを使った瞬間に電圧が下がり、その影響でLED電球の回路が不安定になって点滅を始めることもあります。
点滅は「もう限界」の合図
「チカチカするけど、まだ点いてるからもったいないし使おう」と考えるのは非常に危険です。点滅している状態は、内部の回路が正常に機能しておらず、無理やり動作している状態です。
このまま使い続けると、回路部品が異常に発熱して焼き切れたり、最悪の場合は後述する発煙トラブルに繋がる可能性があります。点滅が始まったら、それは「寿命」です。すぐに新しい電球に交換してください。
焦げ臭いにおいや煙の正体
もしも部屋の電球から「プラスチックが溶けたようなツンとする臭い」や「白い煙」が立ち上ったら、誰でもパニックになって「火事だ!」と思いますよね。この現象の正体について、少し専門的な視点から解説します。
ダイソーのLED電球の多くは、ボディ(筐体)に「PBT(ポリブチレンテレフタレート)」などの樹脂素材を使用しています。

昔の電球や高級なLED電球はアルミなどの金属製で熱を逃がしやすかったのですが、コストダウンのために樹脂が主流になりました。樹脂は金属に比べて熱伝導率が悪いため、どうしても内部に熱がこもりやすくなります。
通気が悪い環境で使い続けると、内部温度が100℃近くまで上昇することがあります。すると、以下のような現象が起こります。
- 樹脂のアウトガス: 樹脂素材や接着剤が高温で温められ、揮発成分がガスとなって放出され、独特の「新品の機械のような臭い」や「焦げ臭いにおい」が発生します。
- コンデンサのパンク(弁開裂): 回路内の電解コンデンサが熱で膨張し、爆発を防ぐための安全弁が開いて、内部の電解液が蒸気となって噴き出します。これが「白い煙」の正体です。
これらは、厳密に言えば「燃焼(火が出ている)」ではなく「部品の熱破壊」ですが、ユーザーからすれば恐怖であることに変わりはありませんし、放置すれば周辺の部品が炭化して発火に至る可能性もゼロではありません。特に、煙が出た場合はコンデンサが完全に死んでいる証拠ですので、直ちにブレーカーを落とすかスイッチを切って、換気を行ってください。
寿命40000時間と安さの理由
パッケージに大きく書かれた「定格寿命40000時間」という文字。これを信じて買ったのに、「半年で切れた!詐欺だ!」と怒りたくなる気持ち、よく分かります。しかし、この「40000時間」という数字には、メーカー側と消費者側の間に大きな認識のズレがあるのです。
日本照明工業会の規格において、LEDの寿命は「初期の明るさの70%に落ちるまでの時間」と定義されています。つまり、これは「LEDチップという発光素子そのものの耐久性能」を示している理論値に過ぎません。「電球という製品全体が40000時間壊れずに使える」ことを保証しているわけではないのです。
ここに「安さの理由」が絡んできます。ダイソーのLED電球がなぜ100円〜500円で作れるのか。それは徹底的なコストカットの結果です。
低価格を実現するためのトレードオフ(代償)
- 放熱設計の簡素化: 高価なアルミヒートシンク(放熱板)を使わず、薄いアルミ板をプラスチックで覆う構造にすることで材料費を削減しています。その代わり、熱が逃げにくくなります。
- 汎用部品の採用: 電源回路には、数万時間の高温に耐える高信頼性部品ではなく、必要最低限の性能を持つ汎用部品が使われています。これにより、LEDチップが生き残っていても、電源回路が先に寿命(数千時間程度)を迎えてしまうことが多いのです。
つまり、LEDチップ自体は元気でも、それを支える心臓部(電源)や体(放熱ボディ)が先に力尽きてしまうのが、安価なLED電球の宿命と言えます。「40000時間はあくまでLED素子のポテンシャル」「製品としての寿命は価格なり」と割り切って理解することが、精神衛生上も大切かもしれません。
ダイソーのLED電球で発火事故を防ぐ使い方

ここまで、ダイソーのLED電球の構造的な弱点(熱に弱い、回路が弱い)についてお話ししました。しかし、だからといって「ダイソー製品は危険だから使ってはいけない」と結論づけるのは早計です。
要は「使いよう」なのです。大手メーカー品ほどのタフさ(安全マージン)がない分、私たちが使う場所を選んであげれば、安全かつ経済的に活用することができます。ここでは、絶対に避けるべきNGな使い方と、推奨される使い方を詳しく解説します。
密閉器具での使用と熱の問題
お風呂場のボール型照明、玄関のポーチライト、キッチンの手元灯など、電球がガラスやプラスチックのカバーですっぽりと覆われている照明器具を「密閉器具」または「密閉型器具」と呼びます。
ダイソーのLED電球のパッケージを見ると、「密閉器具対応」と書かれているモデルも存在します。しかし、私は個人的にはダイソー製を密閉器具で使うことは強くおすすめしません。たとえ「対応」と書いてあっても、です。
理由は単純で、先ほどからお伝えしている通り「放熱性能の限界」があるからです。密閉器具の中は空気が循環せず、点灯中の熱がどんどん溜まっていきます。夏場などは器具内部が50℃〜60℃を超えることも珍しくありません。樹脂ボディのダイソー球では、この過酷な熱環境に耐えきれず、短期間(数ヶ月〜1年程度)で回路が故障する確率が非常に高いのです。
さらに怖いのが、熱による口金部分のトラブルです。プラスチックのボディが熱で膨張・変形してしまい、いざ電球を交換しようとしたときに「ソケットに張り付いて回らない!外れない!」という事態に陥ることがあります。こうなると器具ごと交換が必要になり、かえって高い出費になってしまいます。
断熱材施工器具への設置リスク
これは火災リスクに直結する最も危険なケースですので、必ずチェックしてください。マンションや最近の戸建て住宅では、気密性を高めるために天井裏にグラスウールなどの断熱材が敷き詰められています。こうした天井に埋め込まれているダウンライトは、断熱材に埋もれても安全なように設計された「断熱材施工器具」という特殊なタイプです。

この器具は、電球の熱が天井裏に逃げない構造になっています。ここに「断熱材施工器具非対応」のダイソーLED電球を取り付けると、電球自体が異常加熱して壊れるだけでなく、器具側の電線やソケットが高温に晒され続けます。
その結果、天井裏の見えない場所で電線の被覆が溶け、ショートして発火する「隠れた火災」の原因になり得ます。これは発見が遅れるため非常に恐ろしい事故です。
確認方法と「Sマーク」
ご自宅のダウンライトの枠や内側を見てください。「SB」「SGI」「SG」というアルファベットのマークが表示されていませんか?これらは全て断熱材施工器具を示しています。ダイソーの電球パッケージには、多くの場合「断熱材施工器具不可(バツ印のアイコン)」が描かれています。このマークがある器具には、絶対に使用しないでください。
調光器で使うと危険なケース
リビングや寝室などで、壁のダイヤルやスライドスイッチで明るさを無段階に調節できる「調光機能」がついた照明器具をお使いの方も多いでしょう。この調光回路で使う電球選びも、非常にシビアです。
調光器は、電気の波形を高速で細かくカットする「位相制御」という仕組みで明るさを調整しています。これに対応していない一般的な(安い)LED電球を取り付けると、回路が誤作動を起こします。
- 症状1: スイッチを入れた瞬間に「ジージー」「ブーン」という異音(鳴き)がする。
- 症状2: ストロボのように激しく点滅したり、勝手に消えたりついたりする。
- 症状3: 過電流が流れて、電球内部の回路が一瞬で焼き切れて発煙する。
ダイソーにも「調光器対応」と書かれた少し高価(といっても数百円ですが)なモデルがありますが、100円〜200円の標準モデルの多くは「非対応」です。誤って接続すると一発で壊れることもあるため、購入前のパッケージ確認は必須です。
火事を防ぐ安全な設置場所
ここまで「ダメな場所」ばかり挙げてしまいましたが、逆に言えば、条件さえクリアすればダイソーのLED電球は最強のコストパフォーマンスを発揮します。安全に使うための合言葉は「熱がこもらない開放的な場所」と「点灯時間が短い場所」です。
私が自信を持っておすすめできる設置場所と、避けるべき場所をリストアップしました。
| おすすめの場所(ダイソー製でOK) | 理由とメリット |
|---|---|
| トイレ・廊下・階段 | 1回あたりの点灯時間が短く、熱が蓄積する前に消灯するため、回路への負担が少ない。カバーのない開放型器具が多いのも◎。 |
| 物置・納戸・クローゼット | 使用頻度が低く、たまにしか点けない場所に数千円の電球を使うのはもったいない。 ダイソー製で十分。 |
| クリップライト・スタンドライト | 傘が浅く、電球が空気に触れている状態なら放熱がスムーズに行われるため、比較的長持ちする。 |
一方で、リビングやダイニング、キッチンなど「家族が集まって長時間(数時間以上)つけっぱなしにする場所」には、パナソニックや東芝などの大手メーカー製をおすすめします。
これらは放熱設計がしっかりしており、長時間点灯でも熱ダレしにくく、光の色(演色性)も綺麗なので、料理がおいしく見えたり肌色が健康的に見えたりするメリットもあります。
ダイソーのLED電球の発火リスク総まとめ
最後に、今回お話ししたダイソーのLED電球に関するリスクと安全対策について、重要なポイントをまとめます。
まとめ:正しく恐れて、賢く使おう
- ダイソー製だからといって、通常使用で勝手に発火・爆発するような危険な製品ではありません(日本の安全基準PSEマークも取得済み)。
- ただし、コストダウンの影響で「熱に弱く、電圧変動に弱い」という明確な弱点があります。
- 「密閉器具」や「断熱材施工器具(Sマーク)」での使用は、熱がこもって故障や発煙の原因になるため、たとえ対応表記があっても避けるのが無難です。
- 「点滅」や「異臭」は危険信号です。もったいないと思わず、直ちに使用を中止して交換してください。
- トイレ、廊下、物置など、熱がこもりにくい場所で「適材適所」に使えば、家計の大きな助けになります。
「100円の電球」は、決して「安物買いの銭失い」ではありません。その特性を理解し、無理な負担をかけない場所で使ってあげれば、十分にその役割を果たしてくれます。
逆に、リスクの高い場所には信頼できるメーカー製を使う。この使い分けこそが、安全で快適な照明環境を作る一番の近道です。不安な方は、まずはトイレの電球ひとつから試してみてはいかがでしょうか。正しい知識を持って、安全な明かりを手に入れてくださいね。

